Project Type: Renovation / Site: Tokyo Setagaya / Floor area :60㎡ /
Design :HAMS and, Studio / Build: Roovice
ゼネコン設計部に入社し、丸5年が経ち、夫婦共に30歳の節目となったこの年、中古マンションを購入し、自分達でリノベーションすることを計画した。会社で携わっているオフィスビルや商業施設等の規模の大きい建物とは全くスケールの異なる個人住宅の設計を試みた。
コンセプトは「wonder the one room」。壁で区切るのでなく、雰囲気や空気感で仕切り、どこからでも螺旋階段とトップライトを感じることのでき、一室の中で取りうる最大の気積を確保した「ワンルーム」としている。
モンゴルのゲルを代表とする原初的な住居の在り様として、「ワンルーム」はある。壁を立てず、ゾーンやコーナーを一つの空間にレイアウトし、中央に天窓のある住まい。今回のリノベーションは、ライフスタイルが多様化する現代における「ワンルーム」へのスタディそのものであり、とにかく壁で細かく仕切り、部屋数の確保を第一とする、不動産思想に寄った従来の間取りの考え方から解放する事をプロジェクトの切り口としている。
一つの空間にリビングコーナー、ベッドコーナー、ダイニング・ワーキングコーナー、ストックコーナー全てをレイアウトし、各々のコーナー同士が適切な「距離感」を保つために、壁ではない3つの「wonder」を散りばめた。
一つ目はコーナーを横断する土間。玄関からトップライト下を通りベッド手前まで、ワンルームの中央にはモルテックスの土間が貫入する。各コーナーのゾーンとは関係ない位置となるように土間範囲を決めることで、それぞれのコーナーが分かれながらも繋がっている、不思議な距離感を生むと考えた。
二つ目は、寝室のプライベート感と空間の奥行感・つながり感を生み出す仕掛けとしてのS字フルハイトカーテン。1枚のカーテンの裏側には寝室・クローゼットがあり、寝室との間にL型のカーテンをもう1枚配置している。2枚のカーテンを閉じることで視線を遮ることができる。自分達の気分やトップライトからの光に合わせて、空間の透け感を選択できるように計画した。
三つ目は、本棚であり、倉庫であり、ディスプレイであり、テレビボードであり、化粧台であり、照明であり、テレワークスペースである、暮らしを凝縮したフレーミングウォール。
建築学科に入った時からずっと夢だった、「自分達のデザインした場所で暮らす」ということ。30歳になったこの年、ひとつの夢が実現したこの作品を境に、「建築家」としても自分達のキャリアを考えるきっかけとしたい。
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